速報:眠れぬ夜のメタファー 万城目純+貝ヶ石奈美in水のトーテム

 (撮影:大杉謙治)
  (撮影:大杉謙治)
こちらは公演の模様。写真はご来場下さった大杉謙治氏。
この日のディレクションは万城目純氏。ダンサーの貝ヶ石氏の存在を媒介しつつ、塚本氏の作り上げた「場」へ有機的な脈動をもたらす、刺激的なコラボレーションとなった模様。
以下は.kitenスタッフ川津望氏による公演レビュー。
冒頭、ジャケットとコート姿というフォーマルないでたちの貝ヶ石奈美と万城目純は壁面に設置された塚本の作品を眺めるところからはじまる。ヒールの高い靴を時に引きずりながらカバンから取り出した真っ赤な口紅を引く貝ヶ石の口元に浮かぶ「奇妙なえまい」。それは川端康成的な喪の女の特異さを得て、眠れぬ夜は万城目の「人は死にむかって成長してゆく」という囁き声から徐々に空間をまなうらへうつす。水のトーテムのうしろへまわり、突如レオタード姿になった貝ヶ石は手足を蔦のように空間へ絡める。貝ヶ石のはらむ官能と身体のやわらかさへ、塚本のOHPによる「でろり」とした液体の繁栄が夢に深遠な連想をもたらしてゆく。漆黒のシャツを着た万城目が氷の入ったボールを持って登場、そして巨きなラップは、リゴルモルチスのように貝ヶ石の佇まいの崇高さを保ったまま、しずかな乱れへと音と共に巻き込む。水のトーテムの意味がずれてゆく。すなわちシャワールームは塚本曰く「今日は精液に見える」という壁面の作品によって乱反射しつつ増殖する。氷を頬ばり、吐き出す貝ヶ石。水中の吐息は夢の中では重力の力さえ引き受ける。ベリー類や氷をひとしく絞る万城目の積極によって水のトーテムは名指し得ない神秘をたたえた絵図となる。塚本がOHPから赤い反映を貝ヶ石に投げかけるとき、それは日の出なのか、凄惨な結末なのか。未成熟な誕生をことほぐかのように万城目のくちから「死んでゆくのはいつも他人」のことばが発せられる。(川津望)
記録、よりも、時間と空間の記憶の共有の手がかりとして、あるいはその場にいられなかった人たちへの、空気のひとひらの贈り物として。
  (撮影:大杉謙治)

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