3月11日「舞踏考 鎮魂」ご予約受付中!

来る3月11日の「舞踏考 鎮魂」につきましては、お席の用意などの都合がございますため、なるべくご予約下さいますようお願いいたします。

ご予約は上記リンク先のFBイベントへのコメントにてお申込み下さるか、あるいは

pact.kiten@gmail.com

までメールにてお名前とご予約人数をお知らせくださいませ。

日時 2018年3月11日
開場 18:30 開演19:00
場所 .kiten

出演
小林嵯峨  舞踏
森川雅美  即興詩
山崎慎一郎 音楽
川津望   ボイス

料金 前売り 2500円
当日  3000円

限定 30名

雪の上に、あのひとが残していった足跡が続いていた。
(中略)

誰かが傷ついて血をしたたらせ、よろめきながら歩み去った跡とは違う。‪あのひとは橋懸かりを通って消えていくように、まさしく雪女に扮したシテのように、遠ざかっていった。その動きは緩やかで、しかも信じがたいほどの速度をもっていた。すると規則正しく残されたこの鮮血の足跡は何だろうか。
(中略)

答は結局のところ、あのひとが誰だったかによって決まる。亡くなった‬母上、今の母上、雪女、そのすべてである女人……頭の中ではそれらが追っかけ合う人魂のように回りつづけていた。

倉橋由美子著『完本 酔郷譚』より
「雪女恋慕行」から
河出文庫、2012

ひときわ感覚ばかり身のうちそとに騒々しく、敷き布団に接する背なかが月よりも遠く思われる時がある。哀しみや痒みは薬指の指紋を鼓膜へ押しやり、亡くなったひとのことが思い出され、気管が針の孔より細くなる心地。レコードからショパンのノクターンが流れる。涙は流れる、しかしこの涙があのひとの続きを掴む手となるか。

わたしは意識をうしなう。指は反り、雲に隠れそうな背なかは反り、いかなる抱擁を経てなおひじは終点を持たず、跳ねて、とまる。直立する。

ーー床をあたためたのはあしうら、それとも月あかりか。踏んでは歩けないものと、出会ってゆくしかない。

目覚めると踊っていた、と聞く。わたしにその記憶はない。ただ、逝ってしまったひとの笑顔が五体に貼り付いていた。いまもそれは皮膚にひりひりと残って。

親指の腹に小さな穴が生じ、血が滲んでいる。

――text by 川津望

 

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